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オンリー・イエスタデイ 22「嘘つき」

 私はAのグループとは距離を保ちながらも、Aのことを常に意識していた。  下校の途中、道端にある駄菓子屋で、私がコーラを飲んでいると、Aのグループが店に入ってきた。だれかがグレープ味のチェリオを買い、Aが「それ、うまいか」と訊ねた。  ...
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オンリー・イエスタデイ 21「頽廃」

 小説を読むようになって勉学を忘れたAは、となりのクラスの怪しげな連中と付き合うようになった。メンバーは、毎日遅刻してくる背の低い豆腐店の息子、暴力沙汰で有名な中学の出身で、常に冷笑を浮かべている皮肉屋、北海道から転校してきたフランケンシュ...
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オンリー・イエスタデイ 20「ガリ勉」

 高校1年のときの私のガリ勉ぶりは、今思い出しても、常軌を逸していたと言わざるを得ない。なぜそんなことをしたのか。  当時の私は、よく言えば純粋培養の優等生、悪く言えば無思慮な勉強オタクだった。医師の家系に生まれ、親類にも医師が多かったの...
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オンリー・イエスタデイ 19「進学校」

 中学3年生のとき、私はAとはクラスが別だったので、ふだんはあまり話す機会がなかった。高校受験が近づいたある日、朝礼が終わって教室にもどるとき、たまたまAといっしょになった。Aも私も府立の進学校を受験する予定だった。私は模擬試験ではいつも合...
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オンリー・イエスタデイ 18「焚書」

 戦車模型の仲間で、コバシという同級生とAが私の家に遊びに来たことがある。コバシはA同様、プラモデルにモーターを入れず、実車の写真を参考に改造してディスプレイを愉しむマニアだった。だから、Aは私よりコバシを高く評価していた。  部屋で遊ん...
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オンリー・イエスタデイ 17「激情2」

 中学2年生のクラスでは、いちばん成績のよかったのはAで、次が私、三番手がサダだった。定期テストのあと、答案が返ってきたらよくこの3人で点数を見せ合っていた。  社会のテストを返すとき、先生がこのクラスでは100点は1人だったと告げた。休...
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オンリー・イエスタデイ 16「美しい風景」

 Aの絵のうまさは、中学生になってもいっこうに衰えることがなかった。それは立体の造形でも同じだった。   あるとき、Aは女性の胸について、「オッパイの先は外側に向いてるんや」と言い、両手の人差し指を胸の前で立てて開いた。女性の乳首は正面を...
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オンリー・イエスタデイ 15「ねむらし屋の息子」

 Aに頭頂部を殴られたスミダは、母親が手芸店を営んでいた。それでAは、スミダのことを「毛糸屋の息子」と呼んで、馬鹿にしていた。  余談だが、今は「○○屋」という言い方を小説で書くと、校正で直される。その職業を蔑視していると受け取られるから...
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オンリー・イエスタデイ 14「孤高」

 中学2年生のクラスでは、Aと私とサダという生徒が成績上位だった。前期の代議員を決めるとき、サダと私のほか何人かが立候補して、クラス投票で私が選ばれた。当時の私は代議員に選ばれることに価値を見出していた。  Aはそういうことに無関心であり...
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オンリー・イエスタデイ 13「激情」

 中学2年生になって、Aと私は5年ぶりに同じクラスになった。  その少し前から、男子の間で戦車の模型を作ることが流行っていた。当時、田宮模型が精巧なプラモデルを出していて、ただ組み立てるだけでなく、実車の写真を見て塗装したり、型式を改造し...