2019-07

小説

オンリー・イエスタデイ32「地下室の住人」

 トルストイに負けず劣らずAを魅了したのが、ドストエフスキーだった。  彼は『罪と罰』を読んで、いたく感動したようだったが、中でも特に酔いどれの退職官吏、マルメラードフにシンパシーを感じたようだった。  マルメラードフは、肺病の妻のスト...
小説

オンリー・イエスタデイ 31「Comme il faut」

“Comme il faut”(コム・イル・フォー)とは、“品のよい”とか、“礼儀をわきまえた”とかいう意味のフランス語である。この言葉はトルストイの『青年時代』に出てくる。  この概念が、17歳のAをいたく魅了し、彼の価値判断の絶対基準...