2020-05

小説

オンリー・イエスタデイ52「煉獄」

 大学の同級生を“ヴァルガー”と見なしながら、自分だけは“コム・イル・フォー”でいようと努めていた私は、小説家になるという崇高な志(自分ではそのつもりだった)を胸に秘めていたため、大学の勉強に時間を費やしているヒマはなかった。  しかし、...
小説

オンリー・イエスタデイ51「無意味」

 大学に合格したあと、私は久しぶりにAに会った。春の夕暮れどき、Aを誘って近所の墓地を散歩したのだ。その墓地は中学校の横の大きな池の傍にあり、周囲をススキに囲まれていた。  Aは世俗的な価値を超越していたので、私の合格を祝福したりはしなか...