小説

小説

オンリー・イエスタデイ 25「貧乏ゆすり」

 高校2年の1学期、私は相変わらず勉強に打ち込む日々を送っていた。  おかげで成績は上がったが、模擬試験で名前が張り出されるところまではいかなかった。私の通っていた高校では、450人中上位20番までが、毎回、職員室前の廊下に張り出されるの...
小説

オンリー・イエスタデイ 24「倫理社会」

 高校2年の組替えで、私はふたたびAと同じクラスになった。小学校、中学校から3度目だ。奇しくも、毎回2年生のときに同じ教室で学んだことになる。  始業式の日、教室に入ると、先に席に着いていたAが、私を見て「よう」と愛想よく手を振った。以前...
小説

オンリー・イエスタデイ 23「熱病」

 気が狂ったように勉強していた高校1年の3学期。2月に札幌で冬季オリンピックが開かれた。  日曜日の午後、いつも通り勉強に打ち込んでいた私は、少し休憩がしたくなり、自室から居間へ行った。父がテレビでフィギュアスケートのフリーの演技を見てい...
小説

オンリー・イエスタデイ 22「嘘つき」

 私はAのグループとは距離を保ちながらも、Aのことを常に意識していた。  下校の途中、道端にある駄菓子屋で、私がコーラを飲んでいると、Aのグループが店に入ってきた。だれかがグレープ味のチェリオを買い、Aが「それ、うまいか」と訊ねた。  ...
小説

オンリー・イエスタデイ 21「頽廃」

 小説を読むようになって勉学を忘れたAは、となりのクラスの怪しげな連中と付き合うようになった。メンバーは、毎日遅刻してくる背の低い豆腐店の息子、暴力沙汰で有名な中学の出身で、常に冷笑を浮かべている皮肉屋、北海道から転校してきたフランケンシュ...
小説

オンリー・イエスタデイ 20「ガリ勉」

 高校1年のときの私のガリ勉ぶりは、今思い出しても、常軌を逸していたと言わざるを得ない。なぜそんなことをしたのか。  当時の私は、よく言えば純粋培養の優等生、悪く言えば無思慮な勉強オタクだった。医師の家系に生まれ、親類にも医師が多かったの...
小説

オンリー・イエスタデイ 19「進学校」

 中学3年生のとき、私はAとはクラスが別だったので、ふだんはあまり話す機会がなかった。高校受験が近づいたある日、朝礼が終わって教室にもどるとき、たまたまAといっしょになった。Aも私も府立の進学校を受験する予定だった。私は模擬試験ではいつも合...
小説

オンリー・イエスタデイ 18「焚書」

 戦車模型の仲間で、コバシという同級生とAが私の家に遊びに来たことがある。コバシはA同様、プラモデルにモーターを入れず、実車の写真を参考に改造してディスプレイを愉しむマニアだった。だから、Aは私よりコバシを高く評価していた。  部屋で遊ん...
小説

オンリー・イエスタデイ 17「激情2」

 中学2年生のクラスでは、いちばん成績のよかったのはAで、次が私、三番手がサダだった。定期テストのあと、答案が返ってきたらよくこの3人で点数を見せ合っていた。  社会のテストを返すとき、先生がこのクラスでは100点は1人だったと告げた。休...
小説

オンリー・イエスタデイ 16「美しい風景」

 Aの絵のうまさは、中学生になってもいっこうに衰えることがなかった。それは立体の造形でも同じだった。   あるとき、Aは女性の胸について、「オッパイの先は外側に向いてるんや」と言い、両手の人差し指を胸の前で立てて開いた。女性の乳首は正面を...