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オンリー・イエスタデイ 28「モルモン教」

 高2の1学期が終わるころ、私はモルモン教の宣教師と親しくなった。  きっかけは、昼休みに街頭にいる宣教師に話しかけたことだ。モルモン教に興味があったわけではない。実地の英会話を鍛えたくて、アメリカ人と話してみたいと思っていたのだ。学校で...
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オンリー・イエスタデイ 27「晴天嫌い」

 そのころの私は、Aの悪魔性、反社会性に惹かれながらも、自らの優等生的な良心にも執着を感じていた。努力することや、誘惑に負けず自分の意志を貫くことに、まだ価値を見出していたのだ。  倫理社会の授業で、クロムウェルの禁欲主義を習ったときも、...
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オンリー・イエスタデイ 26「銀縁眼鏡」

 高校2年のころのAの風貌には、一種独特のものがあった。   7歳のときから彼を知っている私としては、ある種の異様さにますます磨きがかかった印象だった。  Aは中学生になってから、近視の眼鏡をかけていたが、そのころは縁が黒と透明のプラス...
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オンリー・イエスタデイ 25「貧乏ゆすり」

 高校2年の1学期、私は相変わらず勉強に打ち込む日々を送っていた。  おかげで成績は上がったが、模擬試験で名前が張り出されるところまではいかなかった。私の通っていた高校では、450人中上位20番までが、毎回、職員室前の廊下に張り出されるの...
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オンリー・イエスタデイ 24「倫理社会」

 高校2年の組替えで、私はふたたびAと同じクラスになった。小学校、中学校から3度目だ。奇しくも、毎回2年生のときに同じ教室で学んだことになる。  始業式の日、教室に入ると、先に席に着いていたAが、私を見て「よう」と愛想よく手を振った。以前...
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オンリー・イエスタデイ 23「熱病」

 気が狂ったように勉強していた高校1年の3学期。2月に札幌で冬季オリンピックが開かれた。  日曜日の午後、いつも通り勉強に打ち込んでいた私は、少し休憩がしたくなり、自室から居間へ行った。父がテレビでフィギュアスケートのフリーの演技を見てい...
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オンリー・イエスタデイ 22「嘘つき」

 私はAのグループとは距離を保ちながらも、Aのことを常に意識していた。  下校の途中、道端にある駄菓子屋で、私がコーラを飲んでいると、Aのグループが店に入ってきた。だれかがグレープ味のチェリオを買い、Aが「それ、うまいか」と訊ねた。  ...
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オンリー・イエスタデイ 21「頽廃」

 小説を読むようになって勉学を忘れたAは、となりのクラスの怪しげな連中と付き合うようになった。メンバーは、毎日遅刻してくる背の低い豆腐店の息子、暴力沙汰で有名な中学の出身で、常に冷笑を浮かべている皮肉屋、北海道から転校してきたフランケンシュ...
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オンリー・イエスタデイ 20「ガリ勉」

 高校1年のときの私のガリ勉ぶりは、今思い出しても、常軌を逸していたと言わざるを得ない。なぜそんなことをしたのか。  当時の私は、よく言えば純粋培養の優等生、悪く言えば無思慮な勉強オタクだった。医師の家系に生まれ、親類にも医師が多かったの...
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オンリー・イエスタデイ 19「進学校」

 中学3年生のとき、私はAとはクラスが別だったので、ふだんはあまり話す機会がなかった。高校受験が近づいたある日、朝礼が終わって教室にもどるとき、たまたまAといっしょになった。Aも私も府立の進学校を受験する予定だった。私は模擬試験ではいつも合...