小説

オンリー・イエスタデイ49「泥沼」

 いくら現実から目を背けていても、時間を止めることはできない。  受験の日がどんどん近づいてきて、ヴァルガーとかコム・イル・フォーとか、戯言を言ってはいられなくなった。  それでも、私は受験勉強を嫌悪し、まじめに授業を受けている級友たち...
小説

オンリー・イエスタデイ48「横道」

 高校3年生の1年間は、受験勉強の日々でなければならないはずだ。  しかし、私は高校2年生の半ばに、クラブに復帰し、小説にも目覚めて、勉強時間が減ったのに、成績が上がったので、自惚れた気持で3年生に進級した。  受験勉強など、ヴァルガー...
小説

オンリー・イエスタデイ47「苦悶」

 8月にはエッちゃんの誕生日があった。私はベージュのバギーパンツ濃紺の長袖Tシャツ(バギーパンツに半袖は合わないので)という出で立ちで、酷暑に耐えつつ、待ち合わせの駅に行った。エッちゃんは黄色のポロシャツに灰色のミニスカートだった。  難...
小説

オンリー・イエスタデイ46「暗と明」

 高校3年の1学期、私はAとは別のクラスになり、教室で彼の視線を気にする必要もなくなった。そして、2年下のエッちゃんからつき合いOKの返事をもらい、いとも簡単に幸福の頂点に昇り詰めた。  はじめてのデートは、悩んだ末、映画に行くことにした...
小説

オンリー・イエスタデイ45「堕落」

 奇矯なマントを羽織り、模擬試験で名前が張り出され、小説家になるという秘かな志も得て、私は高校2年3学期、自分の可能性に酔っていた。そういうとき、人は自らの危険な兆しに、気がつきにくいのかもしれない。  あとから思えば、その兆候はすでに明...
小説

オンリー・イエスタデイ44「マント」

 高校2年の冬、私はとにかく個性的でありたいと願っていた。  もともと、人と同じというのがいやな性格だったので、団体行動も苦手だったし、みんなで何かを成し遂げるというようなことも嫌いだった。祭りや盆踊りの雰囲気は好きだったが、あくまでその...
小説

オンリー・イエスタデイ43「慢心」

 私がAに感じていた特異な個性が、幻想だったとすれば、私はなぜそのようなものを求めたのか。どうしてそんな架空の憧れめいた意識を持とうとしたのか。まったく心当たりはない。  もしかして逆に、Aが私の幻想を維持するために、私のイメージに合うA...
小説

オンリー・イエスタデイ42「告白・後編」

 Aが私以外の連中と親しくし、酒まで飲み、あまつさえ電話で女子に告白をするなどという“ヴァルガー”な行動に出たことで、私はプライドを傷つけられ、Aに対する信頼は大いに損なわれた。  部屋を出た私は、たまたま出会ったクラスの優等生に声をかけ...
小説

オンリー・イエスタデイ41「告白・中編」

 修学旅行の3日目は、高千穂から延岡に向かい、夕方、青島に着いた。Aと私は、またクラスの連中から離れ、相変わらず観光名所などは無視して、あちこちを歩きまわった。  青島にある溶岩が固まった波状の岩である“鬼の洗濯板”だけは、地球離れした景...
小説

オンリー・イエスタデイ40「告白・前編」

 高校2年生のとき、私はAとともに自らを孤高に仕立て上げ、意味もなく級友たちを忌避し、ほとんど口も聞かなかった。  10月には修学旅行があったが、その間も同じメンタリティを保つつもりだった。ところが、早朝に集合場所に集まり、Aと顔を合わせ...