小説 オンリー・イエスタデイ 15「ねむらし屋の息子」 Aに頭頂部を殴られたスミダは、母親が手芸店を営んでいた。それでAは、スミダのことを「毛糸屋の息子」と呼んで、馬鹿にしていた。 余談だが、今は「○○屋」という言い方を小説で書くと、校正で直される。その職業を蔑視していると受け取られるから... 2018.11.01 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 14「孤高」 中学2年生のクラスでは、Aと私とサダという生徒が成績上位だった。前期の代議員を決めるとき、サダと私のほか何人かが立候補して、クラス投票で私が選ばれた。当時の私は代議員に選ばれることに価値を見出していた。 Aはそういうことに無関心であり... 2018.10.15 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 13「激情」 中学2年生になって、Aと私は5年ぶりに同じクラスになった。 その少し前から、男子の間で戦車の模型を作ることが流行っていた。当時、田宮模型が精巧なプラモデルを出していて、ただ組み立てるだけでなく、実車の写真を見て塗装したり、型式を改造し... 2018.10.01 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 12「頭がいい」 小学6年生のとき、Aは緑色の毛糸の帽子をかぶるようになった。当時、テレビで放映していたアメリカのコメディ「ザ・モンキーズ」のマイク・ネスミスがかぶっていたのと同じものだ。近くの手芸店で作ってもらったものらしかった。 同じ帽子を、カヤと... 2018.09.15 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 11「アイドル」 小学5、6年生のときは、Aとクラスが別だったので、いっしょに遊んだ記憶はほとんどない。ただ、ときどき彼の特異な感覚に驚かされることはあった。 クラスにかわいい顔の男子がいて、担任の先生が「美少年」だと言った。すると、それを聞きつけたA... 2018.09.01 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 10「秘密」 小学5年生に上がるときのクラス替えでは、またもAとは別のクラスになった。 私はほかに親しい友だちができ、Aのことはあまり意識しなくなった。しかし、どういうわけか、性的な記憶に関してはAの影がチラついていたように思う。 そのころ、家... 2018.08.15 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 9「自慰」 ふつう、子どもはどのようにして自慰を覚えるのか。 人それぞれだろうが、私はそれを自分で知った。 小学4年生のとき、ときどき夜に理由もなくコーフンして、性器が大きくなることがあった。布団の中で、私はそれをいじめるように握ったりこすっ... 2018.08.01 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 8「白血病」 小学3、4年生のときに好きだったトモコのほかにも、私は白血病で女友だちを失っている。 幼稚園からいっしょだったゼニタカジュンコで、家も近所だったので、何度か互いの家で遊んだ。顎が小さく、髪が自然にカールして、睫毛の長い優しい目をしてい... 2018.07.15 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 7「脅迫」 3年生の同じクラスに、フカヤヒロシというガキ大将がいた。私は長い間、このフカヤに脅迫され続けた。 私がフカヤに逆らうと、「アレを言うぞ」と脅されたのだ。その一言で私は負け犬同然に尻尾を巻かざるを得なかった。 発端は3年生の夏に行わ... 2018.07.01 小説
小説 オンリー・イエスタデイ 6「好きな子」 小学3年生になったとき、Aとは別のクラスになり、関係は疎遠になった。 私の入ったクラスは明るく健康的な児童が多く、野球やドッジボールでよく遊んだ。 1年生のときに好きになったキクサカエリコも同じクラスだったが、そのころは以前ほど好... 2018.06.15 小説